こんにちは、週刊ブックレター編集部です。
本日ご紹介するのは、ベストセラー『しょぼい起業で生きていく』の著者
えらいてんちょう氏による、SNSマーケティングの解説本です。
標題にもある「ネットゲリラ」とは一体何なのか?
この本は、「持たざる者」が成功する方法を書いた本です。
目的は社内での出世でも起業でもいいのですが、
とにかく、金がない・能力がない・ツテがない……といった
しょぼい人たちを対象にしています。社会は、ごく少数の持てる者たちと、持たざる者たちに分かれています。
今の日本社会なら、大企業や大きな組織に属するエリートたちは前者、私たちは後者です。
持てる者たちや彼らの組織は、軍隊に例えると正規軍です。(中略)一方の私たちには、人も金もモノもありません。しょぼいですね。
でも正規軍が幅を利かせている世界でなんとか成功したい。それはつまりゲリラです。リソースは圧倒的に少ないけれど、
正規軍を相手に戦わなければいけません。(p.19)
冒頭部の上記引用から推測いただけるように、「ネットゲリラ戦術」とは、
インターネットを使った個人のビジネスにおける勝ち方を表しています。
SNSやブログ、YouTubeといったツールを使って、
誰でも情報を世の中に発信できるようになった今、
個人(=本書の言葉で「ゲリラ」)には大きなチャンスが開かれています。
さらに幸運なことに、大企業(=「正規軍」)は、
SNSやインターネットを上手に使いこなせていません。
大企業や資本家は、企業のロゴの下に、
インターネットの拡散の原動力である「共感」を上手く使いこなせず、
昨今取りざたされる炎上問題を避けるのに手いっぱいになっている状態です。
このような「ルールの大変化」の中、
いち早く時代のうねりを感じ取り、新たなルールを上手に味方につけた個人が、
大きなチャンスを得ているのです。
本書はそんな言語化されていなかった「新たなルール」を
言語化した本であると、元2ch掲示板管理人であるひろゆき氏も推薦しています。
本書が一貫して重視しているのは、「共感をつかみ、人を動かすこと」です。
持つものであれ、持たざるものであれ、
人を動かし、皆で戦うというのは、重要です。
しかし、その方法が正規軍とゲリラで違うのです。
正規軍…「金」で人を味方につける
ゲリラ…「感情に訴えること」で人を味方につける
大企業は金、つまり雇用を用いて、人を味方につけ、仕事をしてもらいます。
しかし、ゲリラはリソースが限られるため、
本書の言葉を借りれば「こいつ、面白いな」「意外といいヤツかもね」、
といった感情への訴求、すなわち「共感」を使って、人を味方につけます。
たしかに、
・大企業が宣伝広告費を投じて、メッセージを広げるのに対し、
・個人は共感によるバズを生み出すことで、メッセージを広げる、
といった対比ができるでしょう。
本書では共感を生み出し人を味方につけるためには、
「贈与」が必要だと言っています。
贈与とは「何かをあげる」という意味ですが、
本書ではかしこまったものとして扱っていません。
著者は以下のエピソードを挙げています。
以前、猫好きの年配の女性が住んでいたのですが、
彼女の猫が死んでしまうということがありました。
彼女とは特に親しかったわけではなく、あいさつをするくらいの間柄だったのですが、
悲しんでいるだろうと思った私は花を買い、彼女に届けました。これは贈与行為です。私が買ったのは数百円くらいの安い花なのですが、
それを受け取った彼女の感激といったら、こちらが戸惑うくらいでした。もちろん、私には戦略的な贈与とかいう狙いは無く、
なんとなく花をプレゼントしただけなのですが、
このエピソードを投資という観点から分析すると、
ものすごく効率がいい投資だったといえます。だって、普通、たった数百円で人を感激させることはできませんよね?(p.76)
このようにある種のあざとさを感じさせる、人の動かし方が記されています。
またこのような贈与は、物品や金銭は必ずしも伴わず、
SNSで残す一言メッセージや、「いいね」といったものも含まれます。
また、大きな贈与をするよりも、定期的に・小刻みに贈与をすること
(単純接触効果)が大事だと書かれています。
やさしい言葉で語られているながら、
バックグラウンドに経済学の教養が顔を覗かせ、興味深い内容でした。
・小さな組織がどうやって人を集めるか、
・大企業の力に勝つにはどうしたらいいか、
・どうやってチームをマネジメントするか、
といった文脈において、さまざまなヒントが得られるはずです。