こんにちは、週刊ブックレター編集部です。
本日ご紹介する本は、人間の持つ「意志力」について解説した書籍の紹介です。
意志力とは、「目標や計画を決め、実行していくパワー」のこと。
例えば「痩せたい」と感じたら「体重を3ヶ月後に3kg落とす」という目標を立て、
そのために必要な毎日の消費カロリーと運動量を計算し、実行に移していくには意志力が必要です。
意志力がなければ「痩せたい」と思いながら、
ついチョコレートやラーメンといったカロリーの高いものを食べてしまったり、
運動をせずにダラダラしてしまったりと、目標達成につながらない行動ばかり取ってしまいます。
本書ではこの意志力を鍛えるための方法が多数紹介されています。
「意志力」に関する書籍は概して、抽象的で精神論に偏ってしまいがちです。
しかし、スタンフォード大学の心理学者である著者は心理学や神経学の観点から、
実践的な意志力の鍛え方を提示しています。
例えば、意志力を左右する要因の一つとして、あげられているのがストレス。
意志力は常に一定ではなく、ストレスや気分の落ち込みによって
私たちの意志力が減ってしまい、挫折しやすくなってしまいます。
さらに気分の落ち込みを補填するために、気晴らしの「ストレス解消」を
とる方も多くいますが、なんと以外にも、大半のストレス解消は、
私たちにとってさらに悪影響を及ぼしてしまうということが明らかになっています。
ストレスは私たちをまちがった方向へ進ませ、思慮分別を失わせ、
イタズラな本能のままに動かそうとします。
まさに、ストレスとドーパミンのワン・ツー・パンチ。
その結果、ほんとうは効果などないのに、
原始的な脳が喜びへ至る道だと決めつけた作戦を、私たちは何度も繰り返すことになります。報酬を期待して息抜き作戦に出ると、とんでもないことをしでかす恐れがあります。
ある経済調査では、お金の心配をしている女性は、
不安や憂うつを紛らわせるために買い物をしてしまうという結果が出ました。
明らかに矛盾していますが、即効の気晴らしを望む脳にとっては、じつに理にかなった行動です。
あなたもショッピングをすると気が晴れるなんて思っていると、
お金の心配を紛らすために買い物をしてしまうかもしれません。(P206)
ストレスを解消するための気晴らしが、
更なるストレスの原因になってしまうとは、皮肉な話です。
では本当に効果があるストレス解消とは、どのようなものなのでしょうか。
米国心理学会は最も効果的なストレス解消法として、
「エクササイズやスポーツをする」「礼拝に出席する」「読書や音楽を楽しむ」
「家族や友だちとすごす」「マッサージを受ける」「外へ出て散歩する」
「瞑想やヨガを行なう」「クリエイティブな趣味の時間をすごす」などの例をあげています。
(最も効果が低い方法は、ギャンブル、タバコ、お酒、
やけ食い、テレビゲーム、インターネット、テレビや映画を2時間以上観る、などです)。(P207)
効果のある方法とない方法の違いとして、本当に効果のある方法には
セロトニンやγ(ガンマ)アミノ酪酸など、
気分を高揚させる脳内物質やオキシトシンなどの気分を良くする物質が活性化します。
これにより、脳や体内のストレスホルモンを減少させることができます。
一方、効果のない方法では、報酬を期待させるドーパミンが放出されるため、
脳や体が興奮状態になり、一時的な快楽を味わうことができます。
しかしドーパミンには依存性があるため、何度も繰り返すうちに
やめられなくなってしまい負のループに陥ってしまいます。
もしすでに誤ったストレス解消法を実践しているのであれば、
すぐに正しいストレス解消法へと変える必要があるでしょう。
また一度でも決心や目標を挫折してしまうと、
罪悪感の反動でさらに目標に反した行動をとってしまうことがあります。
例えばダイエット中にも関わらずチョコレートを一粒食べてしまうと、
「ダイエットなんてもういいや」と思ってしまい
ラーメンやカレーなどの高カロリーなものを食べてしまう……。
このような経験をした方は、多いのではないでしょうか。
これは心理学の用語で「どうにでもなれ効果」と呼ばれており、
目標に反した行動をして、落ち込み、さらに目標に反した
不適切な行動を続けてしまうという悪循環をあらわしています。
この「どうにでもなれ効果」を防ぐには、つまづいた際に自分を責めないことが重要です。
ルイジアナ州立大学のクレア・アダムズとデューク大学のマーク・リアリーの研究によれば、
「どうにでもなれ効果」は自分へのなぐさめの言葉によって緩和できるとされています。
意志力を強くするには、「自分に厳しくしなければならない」と思っている方もいるでしょう。
しかし実際は自分に厳しくしたところで、意志力は強くならないばかりか、
自己批判によってモチベーションや自己コントロール力が
低下してしまうことが数々の研究により明らかになっています。
そのため、自分に厳しくするのではなく自分自身にやさしく接し、意志力を高めましょう。
意志力という言葉を扱った書籍は数多く存在しますが、
大半が精神論や抽象的な内容が多いのが現実です。
しかし本書では、最新の研究で明らかになった心理学や脳科学などを
ベースにしているため、とてもわかりやすく実践に移しやすい内容になっています。
「目標達成に必要な意志力を明確な方法で鍛えたい」
「実践に落とし込みやすい本を探している」という方におすすめです。