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粗削りながら本質的な”商売の原則”を記す名著:『ユダヤの商法』【第23号】

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こんにちは、週刊ブックレター編集部です。

本日の書籍は、日本マクドナルドの創設者であり、
ハンバーガー旋風を巻き起こした伝説の起業家である
藤田田(でん)の不朽の名著の新装版です。

「なぜユダヤなのか?」という疑問を当然お持ちかもしれませんが、
日本人事業家である藤田田氏は「ユダヤ商人のビジネス哲学」を大事にして、
マクドナルドや他さまざまな事業で成功を収めてきたからです。

その「ユダヤ商人のビジネス哲学」を、歯に衣を着せぬ言い方で、
時には「下品」と捉えられるのを恐れぬ言い方で、明らかにしたのが本書。
さまざまな経営者が「この本で学んだ」と挙げる名著です。

1972年の初版以降、総計276刷、82万7000部という、
ビジネス書における金字塔ともいうべき記録を残した
大ベストセラーの再装であることも注目に値します。

では、さっそく本題のユダヤ人の商売哲学ですが、
複雑でも数が多いわけではなく、いたってシンプルなものです。
藤田氏は以下のように述べています。

「ユダヤ商法に商品はふたつしかない。それは女と口である」(p.34)

本書では「女性」あるいは「」にまつわる商品を売りなさい、
という非常に粗削りなアドバイスに徹しています。
さて、「女と口」とはそれぞれ一体どういうことでしょうか。

商法というものは、他人の金を巻き上げることであるから、
古今東西を問わず儲けようと思えば、
女を攻撃し、女の持っている金を奪えーーというのである。
これがユダヤ商法の公理であり「女を狙え」というのはユダヤ商法の金言なのである。
商才が人並み以上に備わっていると思う人は、女を狙って商売すれば、必ず成功する。
ウソだと思うのなら、試しにやってごらんになるとよい。絶対に儲かる。
反対に、商売で男から金を巻き上げようと思うと、
女を相手にするよりも一〇倍以上もむずかしい。というのは、男は金を持たないからである。
ハッキリ言えば、金を消費する権限を持っていないのだ。(p.34~35)

広告業界で最もホットな(儲かる)客層を表す、
F1層」(Female-1)という言葉がありますが、これは20~34歳女性を指します。

たしかに、レディースアパレルやブランドバッグ、アクセサリーに旅行、化粧品…
といったように女性の消費は派手で、市場が大きいイメージがあるでしょう。

女性商品はたやすく儲かるが、これを扱うにはある程度の才能が必要である。
商品の選択からセールスまで”商才”が必要だ。
しかし、ユダヤ商法の第二商品である『口』は、
凡人でも、凡人以下の才能しかない人でもできる商売なのだ。
『口』ーーつまり、『口に入れるものを取り扱う商売』のことである。(中略)

口に入ったものは、必ず、昇華され、排出される。
一個五〇円のアイスクリームも、一枚一〇〇〇円のビフテキも、
数時間後には廃棄物となって脱糞される。
つまり、口へ入れられた”商品”は、刻々と消費され、
数時間後には次の”商品”が必要になってくる。
売られた商品がその日のうちに消費され、廃棄されていく。
こんな商品はほかには存在しない。(p.36~37)

文房具やインテリア、衣服や指輪といった商材と違い、
食品は消費されても必ずまた必要になります。
それだけ食品が人間にとって、最も重要な商品であり、
昨今AmazonやUberといった大手外資企業が、
巨額の資金をかけて、この市場を狙いに来ているのも頷けます。

昨今のようにITやビジネスソリューションといった、
抽象的なサービスを売っている産業が多い中、市場の原点に立ち戻らせてくれます。

また、「金持ちから流行させろ」という藤田氏自身のアドバイスは、
「世の中のトレンドの本質」をズバリと言い切っています。

ある商品を流行させるには、コツがある。
流行には、金持ちの間ではやり出すものと、大衆の中から起こってくる流行の二つがある。
この二つの流行を比べてみると、金持ちの間から起こってくる流行の方が、圧倒的に息が長い。
フラフープとかダッコちゃん、あるいはアメリカン・クラッカーのように、
大衆の間から爆発的に起こってくる流行は、すぐに消えてしまう。
金持ちの間で流行したものが、大衆のところまで流れてくるのに、だいたい二年ほどかかる。
ということは、金持ちの間に、あるアクセサリーを流行させれば、
二年間はその商品で商売ができるということになる。(p.110)

人間は誰しも自分よりひとつ上のクラスを見て、
せめてその程度の生活はしたいものだと考えるものである。(中略)
この心理を利用して、まず第一級のクラスの金持ちに、ある高級輸入アクセサリーを流行させる。
そのクラスにあこがれている次の金持ちクラスの人が、例えば数の上で二倍いたとすると、
その人たちがやっとその流行品を手に入れたとき、商品は当初の二倍ほど売れたことになる。
そして、またその次のクラスに流行が進んだ時、商品の売行きは四倍に伸びる。
このようにして、高級品は次第に大衆の方へ流れていくわけだが、その期間がほぼ二年なのである。
(p.111~112)

SNSで赤の他人の豪華な生活が垣間見えてしまう昨今、
このようなトレンドの動きを知っていれば、未来を予測し、
大きな商機に巡り合えるかもしれません。

著者が実践していたという「ユダヤの商法」は、きわめて単純明快です。
そして、人によっては不快感を覚えるほどストレートな言い回しでそのことを教えてくれます。

日本経済の歴史に残る大経営者の思考の片鱗に触れられる、古典的名著です。

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