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アップルのエバンジェリストが贈るビジネスの立ち上げ方:『起業への挑戦』【第27号】

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こんにちは、週刊ブックレター編集部です。

「起業をする」となると、広範囲に及ぶ知識や経験が求められ、
身近に頼れる経営者先輩がいたならば、大変頼もしいでしょう。

ただ、なかなかそのような人がいない方にとっては、
これからご紹介する本の中で、「最高の師」に出会えるかもしれません。

著者は「全米屈指のベンチャーキャピタリスト」とも呼ばれ、
Appleでチーフエバンジェリスト、Googleでスペシャルアドバイザーを務めたガイ・カワサキです。
また、本書は名著『イノベーションのジレンマ』の著者である
クレイトン・クリステンセンの推薦本でもあり、期待値の高い本です。

本書は計13章にもおよび、商品開発から、資金調達、
採用やチームマネジメント、SNSによるプロモーション、
事業提携、社内調整までを扱っています。
まさに「起業のオールインワン・ガイド」と言わんばかりに、
一冊でわかる、網羅的なコンテンツになっています。

すべてをご紹介することはできませんが、
本書の網羅性や実用性が伝わるいくつかの個所をご紹介しましょう。

支援を仰ぐ

景気がよいときは、インキュベーターやアクセラレーター
といった起業支援プログラムが花盛りになる。
インキュベーターは主にオフィススペースやシェアサービスを提供し、
アクセラレーターはインターンシップ(指導・助言)や各種トレーニングのほか、
顧客、パートナー、資金提供者とのコネクションづくりを重視する。
これらの支援形態は多様多種。たとえば、以下のようなものがある。

・シードキャピタル
支援額は二万五〇〇〇~一二万五〇〇〇ドル(全出資額の五~一五%程度)。(以下略)

・親交・交流
同じような事業ステージにいる起業家とやりとりする機会ができる。(以下略)

・メンターシップと教育
インキュベーターやアクセラレータープログラムの運営者、その友人、
相談役などからアドバイスを受けられる。
できれば業界のベテランや熟練の起業家が望ましい。(以下略)

・事業開発
潜在顧客やパートナー、従業員に紹介してもらえたら、
信用が高まり、製品開発や営業にも弾みがつく。(以下略)

・追加資金
多くのインキュベーターやアクセラレーターがデモンストレーションの機会をつくり、
あなたをエンジェル(個人投資家)やベンチャーキャピタリストに引き合わせてくれる。(以下略)

・事務作業
会計、給与、税金、保険などの基本的業務は面倒だが、避けて通れない。
これらは最も大切な資源である「時間」をあなたから奪い去る。
インキュベーターやアクセラレーターのなかには、こうした作業を
支援するためのスタッフや専門知識を提供してくれるところがある。(以下略)

・オフィススペース
インキュベーターの主なサービスは、オフィススペース、家具、
インターネットアクセスの共有であるが、それらは結局、成功に不可欠な要因ではない。(中略)
コワーキングスペース(事務所スペース共有)の真のメリットは、ニ〇〇平米の
三年リース契約にサインする余裕がないときに融通のきく選択ができることだ。

(p.66~68)

はじめたてのスタートアップを支援してくれるサービスを、
リアルな実情も踏まえて、並行して紹介してくれています。

惜しむらくは、翻訳本なのでアメリカの話に基づいていることですが、
このような支援が受けられるという点では共通でしょう。
孤独や情報不足になりがちなスタートアップですが、
支援者が存在し、いくつかの課題は解決できることを本書は教えてくれます。

また、実際に組織が回るようになるために、五つの提言をしています。

実行の文化を築くには次の五つの方法がある。

・目標を測定・伝達する
目標を定め、これを伝えるだけでも、組織の目標達成の可能性は高まる。
全員が共通の認識を持ち、日々の行動の指針を得ることができるからだ。(以下略)

・進捗度合いを測る
達成へ向けた進捗の度合いを測ってこそ、目標は意味を持つ。
「測定できれば実行できる」ということわざもあるくらいだ。
別の言い方をすれば、正しい目標を選ばないと間違ったことが実行されてしまう。(以下略)

・責任の所在をひとつにする
目標達成の責任者を見つけるのに一〇秒以上かかったら、どこかがおかしい。(以下略)

・解決策の一部になる
リーダーたるあなたは解決策の一部か、問題の一部かどちらかである。
つまり、実行の文化を築くか、奔放で不当な楽観主義の文化を築くか。
あなたの仕事は「大人」として手本を示し、約束を果たすことだ。

・問題が解決するまで、または問題でなくなるまでやり通す
どうせ仕事をするなら、新しい流行りものにかかわりたいのが人情だ。
いまの製品を修正するよりも、次なる画期的製品に取り組みたいものではないか。
でもつまらなくなったからといってプロジェクトに注意を払うのをやめてはならない。
バグの修正を退屈だと思うのはあなたであり、その製品を買ったばかりの顧客ではない。

(p.82~83)

よく目標設定は「SMART」であることが大事と言われます。
Specific(具体的)、Measurable(測定可能)、Achievable(達成可能)、
Related(経営目標に関連した)、Time-bound(時間制約がある)の略です。
実行の文化を形成する上で、このフレームワークも役立ちそうです。

また、「責任の所在をひとつにする」という話も、
経営の世界で昔から言われる「連帯責任は無責任」と同じことでしょう。

網羅的・体系的な知識が一冊に詰まった本であるため、
一部しかご紹介できないことが悔やまれますが、
ぜひ本書を何度も読み返して、ビジネス立ち上げのガイドとしてください。

「Apple」という著者のバックグラウンドから、
「ジョブズはこうだった」というこぼれ話が時折はさまれ、
読んでいてニヤリとする箇所も多々あるでしょう。

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